レレレのお姉さん

今のマンションに引っ越しして4年になる。マンションと言うよりも集合住宅に近いというか、新築の頃は学生寮だったのではないかと思わせる感じが、階段を上がったすぐの古いドアに「静かに、オシャベリもセズ…」と書いたセピア色に染まった紙が剥がし切れなくて引っ付いたままだったり、大家さんがやたら親切で節分に巻き寿司を持って来てくれたりしたかと思うと、選挙の日には「選挙行った?はい、今行って。」とか言ってくるような、ちょっといい感じの地域性のあるマンションなのだ。

2階の部屋なので、子供達の遊ぶ声もよく聞こえるし、隣の人の歌声とか時には変な叫び声?も聞こえる。最初はこの人大丈夫なの?と不安だったけど、今となっては、今日はご機嫌だとか、ああ心病んでるなとか思うだけで普通に馴染んて来た。

ずっと頭が上がらないなあと思う人がいる。

毎朝、レレレのおじさんみたいにお掃除しているお姉さん?かおばさん?(年齢不詳)がいる。引っ越し当初、ゴミ出しの日の朝に見かけて町内のお当番か何かかな?と「ありがとうございます」と声を掛けたのだけれど、ずっと他の人に代わる気配はなく、どうやら雨の日以外はほぼ毎日お掃除しているようだった。

自分の家の前を綺麗にお掃除する人は前に住んでいた町内にも居られたが、その人は自分の前の前の三軒両隣とお向かいの路地沿い、そしてそこから曲がってちょっと広くなっている路地迄お掃除をする。ゴミ出しの日にはゴミのネットを片付けてくれるし、どうなっているのだろうとずっと気になるのだが、たまにはお手伝いしようかと思う時もあるけれど、早起きが苦手な私はゴミ出しの時間に間に合わせるだけで必死で気持ちに身体は付いていかない。

土曜日の午後、買い物帰りにお掃除しているお姉さんを見かけた。黙々とお掃除しているので声を掛けないと気づいてもらえないのだけど、たまたまポケットにちょっと上等のチョコレートを持っていたのであげたくなって「あの、これあげる」って言ったらびっくりされた。「いつも綺麗にお掃除してくれてる」って言ったら「お掃除のおばちゃんなの」って笑っていた。

あんまりお話ししたこともないし、時々挨拶するだけの人なのだけど、その人がいるだけでこの町内が好きになる、優しくなれる、神様みたいな存在の人。

私はお掃除はすぐサボるし、まあるい掃除で終わってしまう人なので、我ながら駄目だなあと反省する毎日なのです。

2階のベランダから下を覗くと路地の角にお地蔵さんがある。そこに毎朝誰かがお参りして花を置いている。

大きな新しいマンションの6階とかではなくて、すぐそこに地域の人達が優しい生活を感じられる、ベランダから見える路地を悠々と歩く野良猫達がいる、そんな今の小さな部屋が大好きです。