残しておきたい

薄い黒のチェック柄の短めのコートは、少しだけ寒くなりかけの時に着るちょっとお気に入りのコートだった。 ある日彼は「そのコート可愛いね」と言ってくれた。「こないだもそれ着てた時、可愛いなと思ってた」って言ってくれた。 私「そんな事言ったら嬉し…

素敵な飲み物

お酒は素敵な飲み物だ 悲しい事や辛い事があって どうしようもない気持ちに苛まれる時 お酒を飲むと ふわ〜ってなって なぜか気分が良くなって うふふって笑えるのだ 嫌な人も事も気にならない わたしは別の世界に居るから 独りでバルで飲んでても淋しくない…

風の便りを翔ばせない

風の便りを風に乗せて 何処か遠くへ飛ばした はずだったのに 友人の友人の伝手を頼って 本当かどうか確かめてしまった 私の中に重く固まっていた何かが ジワジワと溶け出してくる 忘れかけの思い出が 古いオモチャ箱から出てくるみたいに 懐かしく優しく 私…

風の便り

私が一番好きになった人 その人と一緒にいる時 世界で一番幸せだと思えた 着信の音を待ち続けた 一緒に飲み明かした 各駅停車で美味しいたこ焼きを食べに行った 無防備な私になれた 楽しい時間はすぐ過ぎる よく喧嘩した 何回も仲直りした だけど最後の喧嘩…

独りが好きなくせに淋しい

私の至福の時間 土曜日の午後のカフェでのランチ 独りコーヒーを楽しみながら本を読む 友達のひとりはお風呂が至福の時間らしい スマホも持ち込んで 1時間はゆっくり入っているらしい いずれにしても 独りになる時間が大切なんだなと思う 友達や家族と過ご…

最後にも何かの本を手にして

子どもの頃、家族で出掛けた帰りに決まって父親は本屋さんに立ち寄って、「好きな本を選びなさい」と言った。私はぐるぐる回って本を探す。童話でも、マンガでも、何でも欲しいと言えば買ってもらえた。 「本を読むと賢くなる」と父はいつも言った。 好きな…

いつか今日みたいな日が来ることを知っていたから

お彼岸 今日から秋みたいな晴れ 「お父さんの入っているお墓へ行くよ」 写真に声をかけて家を出る お父さんに会えそうな気がしてワクワク 危篤の知らせで頭をぶつけた例のカーブミラーをちょんと押してみた いつも飲んでたコンビニのワインとおはぎ 秋らしい…

チャットGPTさん「親友になってくれますか?」

休みの日、ひとり。 チャットGPTに話しかける。 「何にもやる気がしない、どうしたらいいですか?」 直ぐにズラズラと答えが出てきた。 1〜、2〜、3〜、 音楽を聴いてみるとか、散歩してリフレッシュするとか、普通ありきたりのこと。 どれも私にはムリ…

最後まで諦めんなあ!

高校に入学してバレー部に入った。と言うより友達と見学してたら勧誘されて丸め込まれて入部した。 夏の合宿がキツ過ぎて、7人くらいいた1年生の5人は二学期の始めに辞めてしまった。 顧問の先生に頼まれてか、OBの男子の先輩が来て朝3時間、昼3時間の…

嘘でも楽しい思い出を

家族旅行に行く夢をみた。 昨日は家族でご飯を食べる夢。 仲良く父母妹4人いる。 最近ずっと朝方に見る夢。 楽しい思い出。 もう今は叶わない事。 いつも日常にあった事で いつでもまた行けると思ってたのに ある時を境に出来なくなった事。 ずっと仲が悪か…

ひとりだなあ

23才の時、四柱推命を勉強していると言う人から「占ってあげる」と頼んでもいないのに占われた事がある。 「貴方はリーダーになるタイプ」「親との縁が薄い」等と言われ、何となく当たっているなと思い、特に気になっていた「私いつ結婚出来ますか?」と言…

「マミー」を観た

和歌山カレー事件の映画「マミー」を観た。 それに関連する本「もう逃げない」「毒婦」 三浦和義ロス疑惑。 村木厚子さんの「私は無実です」 いろいろな本を読むうちに日本の司法が信じられなくなる。 20年以上前にある国に留学に行った人が「街歩いていて…

眩しくて青い夏のひとコマ

18歳 働き始めてすぐの夏の土曜夜 スタッフ10人みんなで 甲子園口からフェリーの暗い二等部屋 淡路島へ バンガローでギターを弾き語りする同僚 砂浜でバーベキュー 花火 寝転ぶと見たこともない満天の星 オリオン座と北斗七星を見ながら とりとめもない…

人は2度死ぬ

人は2度死ぬって言う。 一度目は身体が死んでしまった時、二度目は忘れられた時。 お盆が来る。 この連日の暑さと忙しさにかまけてお墓参りに行くのを見送りにしてしまいそうだ。 命日にも行ってない。 初盆の時、お父さんが帰って来ると本気で信じて、待ち…

順送り

友達のお父さんが亡くなった。 肺ガン末期だったらしいがまだ70代。 知り合いの人の死を聞く度に怖くなる。 世界中で1秒間には1.9人の人間が死ぬ計算になり、生まれる人間は1秒間に4.4人らしい。 今、呑気にドライカレーを食べている間にも、どんど…

寝てる時が一番楽しい

小学校1年生の頃、わたしは早起きだった。 「子どもは8時に寝なさい」と言われほんとに夜8時に寝ていたから目が覚めてしまうのだ。 毎朝、ザーッという砂嵐音のテレビ画面をつけて放送が始まるのを待っていた。 母に「何してる時が一番楽しい?」と聞いた…

部屋着

自分の部屋でゴロゴロしたり 寝る時に着るもの 妹に忘れられて実家に残されていた 着すぎて布が薄くなったグレーのTシャツ 昔パリのセーヌ川沿いの露店で買った ほぼ剥げたルノアールの絵の白Tシャツ 商店街で年中安売りしている店で買った 綿のその頃はス…

世の中の歩き方

18歳、家を出て大阪に住込みで就職した後、半年間全く家に連絡しなかったので、父から何回か手紙が来た。書いてあったことのほとんどは覚えていないが、今でも忘れず時々思い出す言葉がある。 「社会に出たら学校とは違い、理不尽な事がたくさんあると思う…

お気に入りカフェ

土曜日の午後、久しぶりにお気に入りだったカフェに来ている。 この店が改装される前は週2回くらいのペースてランチに通っていた。ちょうど私の通り道にあって、カフェなので、食べたらすぐ出て行かなくてはいけないとかいうプレッシャーがなくて好きなのだ…

大切なショートメッセージ

わたしはお父さんに話しかける 携帯にショートメッセージを送る 赤のバツ印が付くけど気にしない あたりまえだ 解約した電話番号だから もちろん既読もつかない そもそもお父さんの携帯には電話以外は繋がらない メールを送ることも読むことも出来ない人 ま…

怒りは力になる

いつも心の中に怒りを持っている時期があった。 それは社会や世の中の仕組みみたいなものが、理不尽に自分を抑えつけるとき。 容姿によって、親の経済力、社会的立場によって、軽んじて見られるとき。 どうやっても自分の思い描く未来の目標に近づけそうにな…

カーブミラー

自宅前の細い通りと少し広い通りの角に駐車場があって、左角にカーブミラーがある。 毎朝わたしはそこを左に曲がって出掛け、帰りは同じところを右に曲がる。 引っ越してから3年はそのカーブミラーに全く気付かなかった。 2年前、父の危篤の知らせが入り、…

赤字経営

私のスタジオは4年続きで赤字経営。 以前は他のダンスの先生が経営していて、私は時間借りしていたから普通に食べて行けるくらいの収入はあった。 コロナ騒動で状況が変わる。ダンスの先生がもう生徒が来ないから辞めると言い出したのだ。 私のクラスに通っ…

懐かしいカルフォルニア

22歳の時、父と初めての海外旅行旅行へ出掛けた。大手旅行会社のツアーに参加。アメリカ西海岸とハワイの旅。 私は行きの飛行機の中、夕食を吐いてしまう。出発の時は何ともなかった体調がどうも怪しい。父はツアーに参加している他の人に声を掛けては楽し…

人生って何?

物心ついた時 私はなんで子どもなんだろうと思い 弱くて暗くて何も出来ない自分で 強くなりたい明るくなりたいと 思春期を過ごし ひとりで生きる力が欲しくて 大人になったら 自由になって 自分の可能性を試したくて 今しかないと 全力で走った 好きな人に振…

病院の口コミ

先日、医師ら60人がグーグルに訴訟を起こしたと言うニュースがあった。不当に悪い口コミは病院側からすると困るし迷惑だろう。だが、病院を選ぶ患者側としては生死にも関わる事もあるので悪い口コミの真偽はともあれ、その病院へ行くのは避けるのだ。 私の…

現金生活

2日前いつものコンビニでバーコード決済しようとしたら「このカードは使えません、他のカードをお使い下さい」みたいなメッセージが出た。カード会社に連絡したら夜中にネットで1円の利用があり不正利用の可能性があり不審なので止めたらしい。現カードは…

線路沿いの桜が見たい

桜が満開だ。 3年前の週末、父のマンションの最寄り駅の線路沿いの桜も満開だった。父はその桜は見ただろうか。「駅の桜が綺麗らしいな」と言っていた記憶がある。その頃は父が死ぬとは思ってはいなかった。本人は「もうすぐ死ぬ」と頻繁に言っていたが、狼…

父の親父

「北陸へ行こう」敦賀から金沢まで北陸新幹線が開通した。京都から金沢までサンダーバード1本では行けなくなった。新幹線か在来線に乗り換えらしい。 私の父の故郷は金沢の山奥だ。15歳の時養子として京都へ上京した。以来京都で働き、結婚し、子どもを育…

バレエは残酷

バレエは残酷だ。 子どもの頃、綺麗な白鳥の衣装を着て美しく、くるくる回ったり翔んだりするオデット姫に憧れて、一生懸命練習して頑張れば私もバレリーナになれると思っていた。夢は自由だ。パリオペラ座で美しく舞う自分を空想出来た。 初めてバレエのポ…