若い時の友達

18歳の時、家を出たくて寮付の職場に就職した。理容のチェーン店で高卒の若者が遠く故郷を離れてひとり立ちする為に都会へ出て来た。みんなひとりで親元を離れて来たので同じ気持ちで仲良くなった。同じ店に配属された同い年の女の子といつも一緒にいた。その子は私と違って暖かい心を持っていた。買い出しに行ったら「プラムケーキ買って来たから半分こしよ」その頃で100円くらいのパン屋さんのケーキだけど半分こで食べた味はとても美味しかった。彼女の家は貧乏で弟や妹が沢山いて毎月仕送りしていた。「一緒に行こら」和歌山の山奥の実家へ連れて行ってもらった事がある。お婆ちゃんが彼女の持って来たお金を仏壇に供えた。小さな妹達が寄って来た。お金はなくても仲の良い家族で助け合って生きていると実感した。こんなに優しい家族があるんだと知った。私は寮を出てひとり暮らしを始めた。その子は時々遊びに来てくれた。泊まって行けば?から一緒に住もうとなった。そして私が職場を辞めて引っ越しする時、本来は駄目な事だけど私の名義で借りていた部屋をそのまま彼女に託して出た。彼女はきちんと家賃を払ってくれて、結婚する時解約して家を出た。

今はそこまで信用出来る友達はいない。

絶対に裏切られないという確信と信頼、裏切られてもいいとさえ思える友達。若くて純粋だからこその友達。今は電話も住所さえお互いにわからなくなってしまった。いつでも一緒にいていつでも会えると思っていたから故に連絡を怠ってしまった。

彼女ならきっと幸せな家庭を築いているはず。