意識がどこかにあるなら

私は今日も目覚めた。
毎日目覚める事が奇跡のように思える。
眠っている間は何も意識がない。
父が死んだ事も忘れて眠っている。
目覚めた瞬間に「ああ、父は死んだんだ」って
いきなり思い出す。
寂しい感情は私の意志とは関係なくやって来る。
父はもう眠ってしまった。
身体は硬く冷たくなっているけど、
まだそこにいる。
本当に意識はないのだろうか?
何にもないのだろうか?
私の事も忘れて眠ってしまったのかな。
私はこんなに思い出して悲しい気持ちで泣いてるのに。
わかってないなあ。
死んだら忘れてしまうのかな。
元気だった時の声が時々聴こえる。
心の中で私に繰り返し話しかける。
でもそれは新しい言葉ではなく、
今より前の過去の言葉。
過去の同じ言葉が録音された、
再生音声機能が自分の中に作られたみたい。
全然更新されない。
意識がどこかにあるなら
魂があるんやったら
更新して。
「お父さん」「お父さん」
何回も呼ぶ私の声はこんなんだったのか。
普段いつも呼んでたのに…
最期に呼び掛け過ぎて今頃気付く。
もしかしたら「なんや」って手を上げてくれるんじゃないかと、
どっかから応えてくれるんじゃないかと
1人で「お父さん」「お父さん」
呼んでみる。