知らない幸せ

私は両親に守られて育った。

深い深い愛情に守られて大きくなった。

信じて疑わなかった温かい家庭。

ある日寝違えて、我慢して学校に行って、

帰り道笑って友達にバイバイして、家に入った途端、

「うわぁーん…痛ぁいいー」大声で泣いて、

母が飛んできて、父も飛んできて、

接骨院に連れて行ってくれた。

病気になると抱っこして病院へ運んでくれた。

母は林檎をすりおろしてくれた。

父はそんな時はいつも「なんか欲しいもんないか?」って聞いて

私の好きなアイスクリームを買ってきてくれた。

友達にいじめられても、「あんたは強いんやから」って励まして

悪いことして先生に怒られても、知ってて知らんふりしてくれた。

勉強しろとは一言も言わず、成績が上がったときは滅茶苦茶褒めてくれた。

寝るときは川の字になって、お話をしてもらって。

すぐそばに父と母がいる家の中は、私にとっては何の心配もない

安全で幸せな場所だった。

大人になってから知った。

父と母の間にあったひずみ、深く傷つけ合い、

憎しみ続けながら何十年も暮らしたこと。

ただただ、子供のために我慢して、それを見せずに生きたこと。

憎むより愛することを選んで。

私を愛し続けてくれた。

自分たちの心をボロボロにしても尚、子供を育てようとして。

だから、だから、私は子供時代の思い出がキラキラして

ずっとずっと心の奥底で光り続ける。

固くて、強くて、どんな刃物にも武器にも降参することなく

永遠に輝き続ける宝石のように。

愛してる。