思い出の空回り

父が亡くなる前、3ヶ月間の訪問看護のノートがある。
父が「死にたい」と何度も電話してきて、私の心は壊れていた。
「しばらくほっといて」って言ったから、私にはあまり連絡は来なくなった。
ちょうどその辺りからの日付から始まる。
父を見てくれていた看護師さんが資料を引き取りに来た。若い元気な男の人だった。
「僕このすぐ近くに住んでて、それ言ったらいつでも来て貰えるなって言われてて」「はい、いつでも電話して下さいって言ったら、すぐ夜に電話で、今からちょっとだけでもいいし来てくれへんかって」「ちょっとだけですよって言いながら」「ある意味人間的というか、面白い人でした」って言ってくれた。優しいな。夜中に迷惑だったろうな。
「優しいお父さんでした?」「娘はかわいいって言っておられましたよ」
涙のスイッチが入る。
1人で不安だったんやろな。
私に会いたかったんやろな。
ごめんね。
なぜ私は行けなかったんだろう。
なぜ私は電話を取れなかったんだろう。
もっともっと側に居ればよかったのだろうか。
父の側に居られる程私は強くなかった。
看護師にも介護士にもなれない自分。
側に行けばもっと壊れる自分しか想像出来なかった。
大好きなのに。
もう会えない。
どこにもいない。
思い出だけが空回りしてる。