尊敬するお医者さん

よくお世話になる整形外科がある。そこの先生に20年位前に膝の手術もしてもらった。若い時はラグビーをやっていた先生でスポーツをして怪我をした人の気持ちを解ってくれる。絶対安静とかはほぼ言わない。「出来るんやったらやっていい、その代わり後冷やして」と。みんな試合とか舞台とかに賭ける強い思いがあるから怪我をしてても出たい気持ちがある。それを頭から否定しない。私も先生が「手術してリハビリして3週間で踊れるから6月の舞台出られるよ」と前向きな言葉で手術を決意した。実際は手術後半年くらいは痛かったけど医者が大丈夫っていうんやから大丈夫なんだと思えた。

後脛骨筋を痛めた時も、普通の捻挫と診断されやはり「踊れるなら踊ってあと冷やして」と言われたけど、あの時「危険だから絶対安静」と言われてたら今みたいに機能不全まで進行しなかったかも知れない。

10年経ってついこの前受診した時に「私の後脛骨筋切れてるかも知れないのでもう少し詳しく調べる事出来ますか?」って言ったら先生は「切れてない。切れてたらこっちには動かせないから」と言い切った。その3日後他所の整骨院の超音波エコーには後脛骨筋は映らなかった。

私が信用し尊敬している先生はすごく忙しい。待ち時間2時間以上は当たり前。だけど絶対に怒ったり偉そうにはしない。笑って診察してくれる。私はその先生をやはり信じたい。もっと高度な技術で手術出来る先生も探せばいるのかも知れないけど現在はリスクの方が高いのかも知れない。整形外科医の研究材料になるだけかも知れないという可能性もある。後脛骨筋腱機能不全症は治らない、切れてないか萎縮しているかも知れない。だけどそれでも生活したり嘘でも踊れるならそれでいいのかも知れない。

手が痺れて肩から腕が重くなった時は「異常ないよ、変な寝方したんちゃう?」だった。あんまり痛いので他の整形に行ってみたら、その先生はいい人で丁寧に説明してくれた。「その先生の診断は間違ってない、ただ貴方が元気そうだし重篤じゃあないから今みたいに聞かれたら説明したけど」と言う事だった。「2ヶ月くらい後には多分自然に治ります」と言われ不安は解消された。

正しい事だけが良い事なのではない。心配し過ぎない方がいい事だってある。私の父は癌の手術と言われたが「早く死んだ方がいい」と言って手術をしなかったがその後10年生きて、しかも死因は老衰による結核だった。生きるのを諦めた方が長生きする事もある。

人柄なんだ。嘘でも間違っても信じたい先生の人柄。笑顔で辛い患者に寄り添ってくれるお医者さん。そこへ行けば心まで少し軽くなるそんな町の医院。

先生ありがとう。