田舎の風景

ガバッと起きた。

明るい朝、田舎のおばあちゃんの家の縁側のすぐ横に引いた布団の上にいた。

「おー、目ぇさめたか」

「おめえもこっち来てぶどう食え」

おばあちゃんのまわりで私の知らない人達(親戚)がみんなでぶどうを食べていた。

とりあえず黙ってぶどうを食べていた。

どうやら両親はよく寝ている私を置いてどこかへ行ったらしい。

「一緒に遊んでやれや」

小学3年で私よりひとつ下の男の子におばさんが言うと

「行こうっ」て言って外へ飛び出した。

山の中にある家のまわりを探検する。

多分出荷用の花花、横向きの木についた椎茸。

「わぁ小さい!」手の平に乗るくらいの西瓜の赤ちゃん。

「さわんなさわんな、盗ったと思われっぞ」

おばあちゃんが「山行くぞ」

私達は腰の曲がったおばあちゃんの後についてどんどん山道を歩いた。

途中に不思議な横穴があって、いつか入ってみたいと思った。

ナスビを採って帰る。

いつの間にか父がいて、きゅうりを採って

「こっちの方から食べてみ゙」と渡されて噛った「甘いやろ」

父と山の反対側を探検に行く。

大きな穴があった。

「ここで昔は死んだ人を焼いた」

「この道をずっと行ったら小学校があったんや」

先祖代々のお墓がある。

「お父ちゃんはこんな山奥で産まれたんやで」

「水道も来てなかったから山水や」

「ここに馬がいたんや、ドウドウお回り言うたらお父ちゃんのことよう言うこと聞いた」

従兄弟のお兄ちゃんと蝶とトンボを追いかけた。

夜になってお菓子が食べたいと言ったらお母さんが「この辺にはそんなお店ないよ」と言ったけど「〇〇さんとこまで行ったらあるとちゃうか」って誰かが「連れてったりや」と。

お兄ちゃんが連れて行ってくれた家か店かわからんようなとこにはお菓子がちょっとだけあった。お菓子屋さんじゃあなくて切手や葉書日用品等も売ってるとこみたいだった。

田舎の家のトイレは怖すぎて夜は絶対にひとりでは行けなかった。

懐かしい田舎の家はもう誰も住まなくなってぼうぼうに草や木に阻まれて近付く事さえ出来ない程荒れている。村の人も居なくなった。お墓はかろうじてあるけれど、そこへ行く道さえ忘れられそうだ。7年前行った時は、柿の木や栗の木は自然に任せて元気そうだった。

昔はその渋柿がよく送られて来たっけ。

塩っ辛過ぎる梅干しや、苦い鬼灯、かき餅。

正月のお餅つきはおじいちゃんが杵でおばあちゃんの手を叩こうとするんやけど、おばあちゃんは素早く餅をかくから絶対大丈夫やったんやて。