もうすぐさよなら

生まれ育った家ともうすぐお別れする。

思い出がいっぱい詰まった家。

学校の木で造られた古い家。

二階を歩くとギシギシ音が鳴る。

壁がポロポロ落ちる、隙間から虫でも猫でも入ってくる、

雨漏りのする家。

だけど、きみと別れるのがとても淋しい。

子供の頃、怖かった和式便所。

母が植えた水仙やチューリップ、朝顔のあった庭。

空を飛ぶ練習をした玄関の台座。

お正月は炬燵でみかんを食べながらトランプをした。

母が作った夕食を食べて、畳の上でごろんとなる。

テレビ見ている母と、すぐそこに父もいる、その安心感。

外でよく遊んだ。道にやかんで線を引いてケンケンをした。

川沿いをどんどん歩いて探検に出かけた。

夏は橋の上から花火が見えた。

遠くにおっぱいのかたちをした山が見える。

一番星はいつも弱い私を励ましてくれた。

淋しいよ。

淋しいよ。

ずっと一緒にいたかった。

いつでも私をそこで待っていてくれると思ってた。

過去はとても若くてみんな元気で、

今はみんな年老いた。

未来はみんな灰になる?

川と山と一番星だけを残して。