子供の頃、鳥のように空を翔びたいと思った。自分で羽根を作りそれを着けて小さな台の上から翔ぶ練習をしていた。本気で練習すれば翔べるようになると思っていた。
「見て見てちょっと翔べるようになったよ」母は「ほんとほんと」とか言って笑ってた。
ちょっと大きくなってそれは無理な事と解ってからは、いつかハングライダーや気球やセスナに乗るとか言っていたっけ。
大人になると、恐怖の方が先に立ってしまって、結局はどれも未だに乗っていない。
ヘリコプターと大型ジャンボ機には乗ったけど、それより先へは進めない。
ずっと空を飛び続けたサン=テグジュペリは砂漠に不時着して死にそうになりながら生還したのに、それでも飛び続けて最後は偵察機に乗っていたところを撃墜され44歳と言う若さで命を落とす。
「地球は青かった」で有名な初めて宇宙へ行ったガガーリンもせっかく生還したのにそれでもまだ宇宙へ翔び立とうとして、それも出来なくなってもパイロットの指導の為飛行訓練を行う。そしてその飛行訓練で教官と共に墜落して34歳で命を落とす。
イカロスの翼だ。
偉大な栄光を手にしながら何故彼らはまだ翔ぼうとするのか。
彼らにとっては空や宇宙を翔ぶことが生きることであったのか。
長く生きる事も選択出来たはずなのに、死の恐怖よりも強く心を動かすものは何なのか。
けれども、そういう人間だからこそ、偉大な業績を遺せたとも言える。
彼らの遺した業績は私達の世代から未来へと新たな進化を生み出す。
改めて敬意と感謝を表したい。