死に際

繁華街の夕暮れ

観光客や買い物帰りの人が待つバス停の脇に1本の銀杏の木がある。

茶色がかった黄色い三角の葉っぱは枝から少し伸びた更に細くてか弱い枝に逆さまにぶら下がっている。

風に揺れる秋の風鈴

もうすぐ散り行くその姿が美しい。

死ぬ間際、人間も美しい。

周りの人に迷惑もかけたかも知れない。

それを疎ましいと思われたかも知れない。

だけど夜中に寂しいからと呼び出された若い看護師さんが、「ある意味人間らしいなと思いました。娘はかわいいって言っておられましたよ。」と伝えてくれた。

迷惑かけるのを恐れないで人間と人間の触れあいを求めることが素敵に思えた。

愛した妻、愛した娘に嫌われて最後までどうしようもない苦しみを胸に秘めながら逝った。

最後まで愛し信じてくれた私には届いている。

美しい人生だった。